head_img_slim

彼には隠し事が・・

彼と出会ったのは、友人のライブでした。小さなカフェで、夜ひっそりと開かれたライブには、演者は三組おり、彼もその内の一組の知り合いで見に来ていたらしく、お酒を飲みながらのまったりとした時間の中で、ふと話しかけられました。暗がりだったので、なんとなくの雰囲気しかわかりませんでしたが、イケメンに話しかけられたなぁ、くらいの感想しか持ちませんでした。

 

話しているうちにお酒の力も借り、打ちとけ合い、そのあと二人で飲み直すことになりました。その日は初対面とは思えないほど盛り上がり、とにかく楽しい、心が浮き上がるときめき溢れる夜になりました。その日は連絡先を交換し、また機会があれば、とお別れしたのですが、その一週間後に、またお会いしましょう、という趣旨のメールがきました。

 

男女

いい出会いがあったけれど、あれはあの日初めて出会った相手ゆえの高揚感からくるものだから、この後に続かなくてもいいかな、などと思っていた自分は何処へやら、飛び上がるほど嬉しく、それを察せられない様に、返事をしました。それからは早いもので、ストレートではないにしろ、好意を伝えてくれる彼に私もどんどん夢中になり、恋人関係になるのは早いものでした。

 

彼はデザイン関係の仕事をしており、自分の世界を持っているような、アーティスティックな雰囲気があったので、ときたまみせる不思議な影、それは声にもたまに出ていたのですが、自分は悪い奴なんだ、といったり、あなたは自分には勿体無い、といった発言を、私は特に重く受け止めず、変わってる人だなぁ、くらいに思っていました。

 

会うのはもっぱら平日の夜のみでしたが、たくさん話をするだけで私は満足でした。一年も過ぎる頃、わりと深刻に、自分は悪い人間だから、もう会えない、と伝えられました。私の方が一回りほど若かったので、そういうことも関係してるのかな、と思ったり、普段から人とはちょっと違う物言いをする人だったので、アーティステッィクな人っぽい変な思い込みだろう、と思ったりもしつつ、そんなことないのでこれからもお付き合いしましょう、と伝えるとやはり、元どおりになりました。

 

そんな時にふと、facebookにどうやら彼が出てきました。今まで出てこなかったのになぜ急に、と不思議に思いつつも初めて彼のページを覗いてみると、彼の交際ステータスのところにはしっかり「既婚」と記されていました。これには本当に驚きました。そういえば平日の夜しか会っていなかったり、旅行さえ一緒に行ったこともなく、一日中遊んだことさえない、そして度重なる彼の自分は悪い奴なんだ発言。「既婚」という文字だけで、パズルがピターッとはまりました。

 

彼に対する怒りや落胆よりも、こんなにもヒントがあったのに気づかない自分に、もはやあっぱれ、と思いました。彼はどんな気持ちでヒントを与えつつ、私と会っていたんだろう。

 

罪悪感に苛まれつつも、気があう私と会う時間はきっと楽しんでくれていて、それを振り切ることもできず、そしてまた罪悪感を感じたり。きっとそんな気持ちだったんじゃないかなぁ、と不憫にも思いました。

 

そういえば、私にはもっといい人がいるから、自分と会っていてはダメだ、なんて歯の浮く様なことも言われたこともありました。なんな度に、アーティスティックな人だから、変わってるなぁと合点していました。彼はずる賢い、というより、きっと変わった雰囲気は本当だから、もうコントロールできなく、でも流せれ流せれてたんだろうと思うと、彼がかわいそうになりました。

 

もちろん好きだったので、とてもショックでしたが、やはり彼の察して欲しそうな気持ちに気付けなかった自分は、図太く、彼が卑怯だったことに変わりはないですが、ああ、なんか大丈夫、と、スパッとお別れしてあげました。きっと彼は私から別れを切り出してもらい、さぞほっとしただろうと思います。


ページトップに戻る